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基本情報の計算問題は捨てる?30年選手が客先で固まった日

基本情報技術者試験の計算問題は、合格だけを目標にするなら捨てても構いません。進数変換や稼働率の計算を飛ばしても、知識問題で拾えば合格ラインには届きます。

ただし条件がひとつあります。「自分は今、どの計算を捨てたのか」を記録しておくことです。

私はそれをやりませんでした。エンジニアだから事務方の計算はいらない、と切り捨てた結果、十数年前のある日、お客様の前で一言も返せなくなりました。しかも傷がついたのは私の評価ではなく、会社の評価でした。

捨てても困らない計算と、後から必ず請求が来る計算があります。その見分け方を、私の失敗談とあわせてお話しします。

基本情報技術者試験の計算問題は捨てていいのか

試験に受かることだけを考えるなら、計算問題は捨てて構いません。ただし「受かる」ことと「困らない」ことは、まったく別の話です。

配点から見れば「捨てても受かる」は事実

基本情報技術者試験は科目Aと科目Bの2部構成で、どちらも1,000点満点中600点以上が合格ラインです(執筆時点の制度です。最新の要件はIPAの公式情報でご確認ください)。

科目Aは60問。このうち計算を伴う問題は、年度によってばらつきはあるものの、全体の一部にとどまります。進数変換、論理演算、稼働率、待ち行列、そして会計まわりの計算。これらを全部落としても、残りの知識問題を取り切れば600点には届くという計算になります。

資格学校の解説でも合格報告でも、「計算は苦手なので捨てた」という話は珍しくありません。限られた勉強時間をどこに配分するかという意味では、戦術として成立しています。

問題は、その戦術を何年使い続けるつもりなのか、というところです。

そもそも科目Aで計算が出るのはどの分野か

捨てる話をする前に、対象を並べておきます。「計算問題」と一括りにされがちですが、実際には性格の違うものが混ざっています。

分野代表的な出題計算の重さ実務での登場頻度
基礎理論進数変換、論理演算、誤差軽い(手順が決まっている)設計・障害解析で頻繁
ハードウェア稼働率、MTBF・MTTR軽い(公式1つ)可用性設計・SLAで頻繁
ネットワーク帯域・転送時間の計算中(単位換算に注意)見積もり・提案で頻繁
ソフトウェア待ち行列、性能計算重い(理屈が必要)性能設計で時々
企業と法務減価償却、損益分岐点、原価中(考え方さえ分かれば)担当者は使わない/管理側は使う

この表を見ると、軽いのに実務でよく使う分野(基礎理論・ハードウェア)と、捨てても当面困らない分野(企業と法務)が分かれているのが見えるはずです。

やっかいなのは、捨てたときのコストがいちばん低く見える最下段が、後になっていちばん高くつくことです。

ただし「捨てた自覚」がないと10年後に困る

計算問題を捨てる判断そのものは間違っていません。危ないのは、捨てたという事実を忘れてしまうことです。

試験が終われば参考書は本棚の奥に押し込まれます。合格証書が届いたころには、自分が何を飛ばしたかなど誰も覚えていません。そして数年後、立場が変わったときに、飛ばした箇所だけが穴として残ります。

私の場合、その穴は「固定資産」という4文字でした。

【30年選手の失敗談】30Mbpsは即答できたのに、固定資産で固まった日

十数年前、ある基幹サーバーの入替案件でのことです。技術の質問なら即答できていた私が、会計の質問ひとつで完全に黙り込みました。

客先から飛んできた「5年未満だけど本当に良いの?」

当時の私の本業は、ネットワークとサーバーの設計・構築です。「このファイル群を30分以内に送り切りたい」と相談されれば、必要な回線速度はその場で計算して返せました。技術の話であれば、どの角度から来ても受けられる自信があったわけです。

ある日、お客様からこんな相談を受けました。

「会計担当から、機器入替で除却する機器について『5年未満だけど本当に良いの?』と聞かれたんだけど、大丈夫だよね?」

言い方から分かる通り、お客様自身もよく分かっていませんでした。会計部門から降ってきた質問を、そのまま私に投げてきたわけです。

今なら分かります。サーバーのような機器には会計上の耐用年数があり、それより早く処分すると帳簿の扱いが変わる場合がある。お客様の会計担当は、そこを確認したかったのでしょう(税務の具体的な扱いは会社ごとに異なります。実際の判断は必ず会計・税務の担当者に確認してください)。

しかし当時の私には、質問の意味そのものが分かりませんでした。

「固定資産とか、よくわからないんですよね」と答えてしまった

私の返事はこうでした。

「固定資産とか、よくわからないんですよね。サーバやネットワークには詳しいのですが……」

嘘はついていません。知らないことを知らないと答えただけです。誠実に対応したつもりでした。

ただ、お客様が求めていたのは誠実さではなく、答えでした。

技術の話をしているときは前のめりだったお客様が、このとき少し引いたのを覚えています。たったそれだけのやり取りですが、十数年経った今でも思い出せます。

サーバーの構成やネットワークの帯域については、資料なしで何時間でも話せました。その同じ口が、機器の処分の話になった途端に止まったわけです。

下がったのは私の評価ではなく、会社の評価だった

この案件には複数の会社が入っていました。私が答えられなかった質問は、結局、別のベンダーに相談して解決したようです。

こたえたのはその後でした。何かの折に、こう言われるようになりました。

「あなたの会社は技術だけですもんね。」

はっきりと嫌味です。そして刺さったのは、「あなたは技術だけ」ではなく「あなたの会社は」という主語でした。

私個人の勉強不足で済む話ではなかった。自分の一言が、会社の評価を一段下げていた。ここに気づいたときの後味の悪さは、技術的な障害を起こしたときとは種類が違いました。

障害であれば、原因を特定して復旧させ、報告書を出せば挽回できます。深夜に叩き起こされても、直せば終わりです。信頼は、そういう直り方をしてくれません。

計算問題を捨てた代償が、10年以上たってから、しかも自分以外のところに請求された。これが私の実感です。

捨てていい計算問題と、後から請求が来る計算問題

計算問題はひと括りにできません。現場に出てからツケが回ってくる度合いが、分野によってまったく違うからです。

現場で毎日使う計算は、捨てても勝手に身につく

進数変換、論理演算、ネットワークの帯域計算、稼働率。このあたりはエンジニアとして働いていれば、嫌でも毎日触ります。

試験で捨てても支障はありません。現場が勝手に再教育してくれるからです。サブネットを切れなければ設計が進まないので、否応なく身につきます。

私が「30分で送るなら何Mbps必要か」を即答できたのも、試験勉強で覚えたからではありません。何百回と見積もりを出してきた結果です。

つまりこの分野は、試験で捨てても現場で回収されます。放っておいても穴は埋まる。

立場が変わった瞬間に来る計算が、いちばん危ない

危ないのは会計・ストラテジ系です。減価償却、固定資産、原価計算、損益分岐点、投資対効果。

これらは担当者でいる限り一度も使いません。だから捨てても痛くない。ところが、リーダーや取りまとめの立場になった瞬間、前触れなく降ってきます。

しかも降ってくる相手は、たいていお客様か経営層です。参考書を開く時間も、「調べて折り返します」で許される空気も、その場にはありません。

どんな場面で降ってくるのか、実際に多いのはこのあたりです。

  • 機器の入替時期を相談されたとき — 「まだ使えるのに替えるの?」という問いは、技術の話に見えて会計の話です
  • リースと買取のどちらにするか聞かれたとき — 費用の出方が変わるため、技術者の一存では答えられません
  • 複数年契約の提案を求められたとき — 初期費用と運用費の配分をどう見せるかで、提案の通りやすさが変わります
  • 社内の稟議を通すとき — 「この投資で何がいくら減るのか」を数字で示せないと、決裁までたどり着きません

どれも、担当エンジニアの立場なら上司が処理してくれていた領域です。自分が上司側に回った瞬間、処理する人がいなくなる。それだけの話でした。

技術計算は現場が教えてくれます。一方で、会計計算を教えてくれる現場は、エンジニアの日常の中にはない。同じ「捨てた計算」でも、回収されるものと放置されるものがある。ここが決定的な違いです。

本当に枝葉で終わる計算もある

出題頻度が低く、実務でもほぼ登場しない計算もあります。試験対策としても、将来の備えとしても優先度は低い。ここは気にしなくて構いません。

大事なのは、全部を拾うことではなく、どれを捨てたのかを自分で分類しておくことです。

整理すると、次のようになります。

分類代表例試験での扱い現場での再会
テクノロジ系進数変換、論理演算、帯域計算、稼働率捨てて可毎日。放っておいても身につく
会計・ストラテジ系減価償却、固定資産、原価、損益分岐点捨てて可立場が上がった日に突然。逃げ場がない
低頻度の枝葉出題の少ない特殊計算捨てて可ほぼ来ない

捨てるなとは言いません。ただ、真ん中の行を捨てるときだけは、メモを残してから捨ててください。

合格ラインを最短で超える計算問題の捨て方

ここからは試験戦術の話です。私が基本情報に合格したのは午後試験があった時代なので、現行制度の細かな攻略法は資格学校の解説や直近の合格報告をあたってください。そのうえで、捨て方の原則自体は今も変わっていません。

捨てる前に「配点の重さ」だけは確認する

やみくもに捨てると事故が起きます。科目Aは60問あり、1問あたりの重みはそれほど大きくありません。一方、科目Bはアルゴリズムと情報セキュリティに範囲が絞られているため、1問の取りこぼしが合否に直結しやすい構造です。

同じ「計算を飛ばす」でも、科目Aで数問飛ばすのと、科目Bのトレースを丸ごと放棄するのでは意味が違います。後者は捨てるというより、合格そのものを捨てることに近い。

捨てる前に、その問題が全体のどこに位置しているかだけは確認してください。

全部を捨てず「解けるパターン」だけ拾う

計算問題を苦手に感じる人の多くは、計算そのものではなく出題パターンに慣れていないだけです。

  • 進数変換のように、手順が決まっていて練習量がそのまま得点になるもの
  • 稼働率のように、公式を1つ覚えれば形を変えても対応できるもの
  • 待ち行列のように、理屈から入ると重いが、頻出パターンだけなら押さえられるもの

この3つのように、費用対効果の高い計算だけを拾って、残りは切る。これが現実的な線です。全問正解を狙うから苦しくなるのであって、2〜3パターンに絞れば負担はかなり軽くなります。

拾うと決めたなら、押さえ方はこの程度で足ります。

進数変換
10進数を2進数にするなら、2で割り続けて余りを下から並べるだけです。16進数は2進数を4桁ずつ区切って読み替えます。手が覚えるまで繰り返せば、本番では数十秒で片づきます。

稼働率
直列に並んだ装置は稼働率のかけ算、並列(冗長)なら「1 −(1 − 稼働率)×(1 − 稼働率)」。この2つだけで大半の設問に対応できます。MTBF・MTTRが出てきたら、稼働率=MTBF ÷(MTBF+MTTR)を思い出せば十分です。

帯域・転送時間
データ量 ÷ 速度 = 時間。ここで単位をそろえます。ファイル容量はバイト、回線速度はビットなので、8をかけるか割るかを間違えないこと。計算そのものより、この換算でつまずく人のほうが多い印象です。

逆に、待ち行列や複雑な性能計算は後回しで構いません。理屈から入ると時間を食う割に、出題数が見合わないためです。

本番で見切る基準を先に決めておく

本番で怖いのは、計算問題に時間を吸い取られて、取れるはずの知識問題に手が回らなくなることです。

そこで、試験前に見切りの基準を決めておきます。

  1. 問題文を読んで、解法が浮かばなければその場で飛ばす
  2. 手をつけた計算が1分を超えたら、いったん離れて後回しにする
  3. 見直し時間が残ったら戻る。残らなければそのまま

科目Aは60問を90分で解きます。単純に割ると1問あたり90秒です。知識問題は数十秒で片づくものが多いので、計算問題に2分かけると、その分だけ別の問題の見直し時間が消えるという関係になります。

この配分を体に入れておくには、過去問演習の段階で時計を見ながら解くしかありません。そして演習中に「これは本番なら飛ばす」と判断した問題を、そのつど印だけ付けておく。捨てる判断は本番で考えるものではなく、練習で決めておくものです。

これは試験に限った話ではありません。障害対応でも、原因の見当がつかない場所を掘り続けるより、切り分けの順番を決めておいたほうが早く復旧します。時間を区切って判断するという点では、試験も現場も同じです。

なお、合格ラインぎりぎりで落ちるパターンについては、こちらでまとめています。

参考基本情報技術者試験:ちょうど600点なのに不合格…あと一歩で落ちた原因と次で受かる対策

「あと数点」の悔しさを抱えているあなたへ 基本情報技術者試験(FE)を受験し、結果が「580点」や「595点」、あるいは合格ラインちょうどの「600点」で不合格(※:どちらかが600点を下回ると不合格 ...

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試験の計算問題は、現場でこう使われている

「この計算、実務で使うのか」という疑問には、使う場面をそのまま見せるのが早いはずです。私が毎週のように使っていた2つを挙げます。

帯域計算:「30分で送りたい」に即答できるか

お客様から「このデータを30分以内に送り切りたい」と言われたとき、必要な回線速度を答えられるかどうか。これは試験の帯域計算そのものです。

考え方は単純で、データ量(ビット)÷ 時間(秒)= 必要な速度(bps)。ここにファイル容量の単位(バイト)とネットワークの単位(ビット)の変換が挟まるので、8倍のかけ違いに気をつけます。

たとえば約6.6GBのファイル群を30分で送るなら、ざっくり30Mbps前後の帯域が要る、という見当がつきます。実際には通信の効率が100%にはならないので、余裕を見た数字を提示します。

この計算がその場でできると、打ち合わせの温度が変わります。「持ち帰って確認します」と言うのと、「30Mbpsは必要です。今の回線だと厳しいので増速を検討しましょう」と返すのとでは、相手の受け取り方がまるで違う。

試験で解いた計算が、そのまま提案の説得力になる場面です。

稼働率計算:99.9%の意味が分かるとSLAの会話が変わる

稼働率も同じです。「99.9%」と契約書に書いてあるとき、それが年間でどれくらいの停止時間を許すのかを言えるかどうか。

年間8,760時間に対して99.9%なら、止まってよいのは約8.76時間です。一見すると高い数字ですが、年に一度の計画停止で半日使えば、それだけでほぼ使い切ります。

ここを理解しないまま「99.9%でいきましょう」と合意してしまうと、後の運用で苦しみます。逆に数字の意味が分かっていれば、「99.9%だと計画停止の枠が残りません」と設計段階で指摘できる。

桁がひとつ変わると、話はさらに変わります。

稼働率年間で止まってよい時間現場での感覚
99%約87.6時間3日以上止められる。運用は楽
99.9%約8.76時間計画停止を1回入れるとほぼ消える
99.99%約52分計画停止すら組めない。冗長構成が前提

契約書に並ぶ「9」の数がひとつ増えるだけで、必要な構成も費用も跳ね上がります。この表が頭に入っているかどうかで、見積もりの説得力が変わるわけです。

試験の計算問題は、こうして交渉のカードになります。捨てても合格はできますが、こういう場面で手ぶらになる、ということでもあります。

ベンダー見積もりの妥当性を、その場で検算できるか

もうひとつ、立場が上がってから効いてくるのが見積もりの検算です。

ベンダーから出てきた構成と金額を前にして、「この帯域で本当に足りるのか」「この冗長構成でSLAを満たせるのか」を自分で確かめられるかどうか。ここで手が動くと、過大な構成を削ったり、逆に足りない部分を指摘したりできます。

必要なのは高度な数学ではなく、試験で出てくる程度の計算です。帯域と稼働率が計算できるだけで、提案書の数字は読めるようになります。

この「見積もりを査定する目」をどう鍛えたかは、IT資格を取りまくる30年選手が明かす見積もりの査定眼で詳しく書きました。資格で覚えた計算が、そのまま交渉の道具になる話です。

捨てた計算問題との、その後の付き合い方

ここからが本題です。客先で固まった私が、その後どうしたか。

私は勉強し直しませんでした

正直に書きます。あの失敗のあと、会計の勉強をしようとは思いました。参考書も探しました。

結局、本腰を入れて学び直すことはしませんでした。餅は餅屋という言葉のとおり、技術は私、会計はその道の人、と割り切ったからです。

これは反省が足りないと言われるかもしれません。ただ、50歳を前にした人間が使える時間には限りがあります。中途半端に会計をかじって、また客先で曖昧な答えを返すくらいなら、別の解き方を探したほうが早いと判断しました。

代わりにやったのは「体制を作る」ことだった

私が実際にやったのは、裏方の事務処理担当との関係を深めることでした。

会計や契約の処理をしてくれる人は、どの会社にもいます。それまでの私は、書類を回すだけの相手として見ていました。そこを改めて、案件の背景や機器の入替時期を共有し、質問が来たときにすぐ相談できる関係を作りました。

そのうえで、お客様にこう伝え直しました。

「会計や契約まわりのご相談も受けられるよう、体制を見直しました。技術と一緒に、そちらもご相談ください。」

自分が答えられるようになったわけではありません。答えられる人を含めた形に、こちらの体制を組み替えただけです。

それでも、お客様との関係は元に戻りました。「あなたの会社は技術だけですもんね」という言われ方も、いつの間にか聞かなくなりました。

PMPを取る前の私が、無意識にやっていたこと

この対応をしたのは、私がPMPを取得するよりずっと前です。当時は、自分が何をやっているのか言語化できていませんでした。

あとからPMPを勉強して分かりました。あれは要員の配置とステークホルダーへの働きかけという、プロジェクトマネジメントの基本動作そのものだったわけです。

  • 自分の能力の外側に課題があることを認める
  • 埋められる人を特定して、関係を作る
  • 関係者に「この体制なら対応できる」と伝え直す

教科書に書いてある順番と、まったく同じことをしていました。知らないままやっていた動きに名前がついた、という感覚です。

だから、計算問題を捨てたことを後悔しているかと聞かれると、答えは半分です。捨てたこと自体は構わない。捨てたまま10年放置して、客先で初めて気づいたことが失敗でした。

「捨てた分野メモ」の作り方

同じ失敗を避ける方法は単純です。試験が終わった日に、飛ばした分野を書き残しておくこと。それだけです。

凝ったものは要りません。参考書の裏表紙でも、スマホのメモでも構いません。書くのは3つです。

  1. 捨てた分野の名前(例:減価償却・固定資産、待ち行列)
  2. 捨てた理由(例:時間がなかった、興味が持てなかった)
  3. 取り戻す合図(例:後輩がついたら、見積もりを任されたら)

3番目が肝心です。「いつか勉強する」では永遠に来ません。自分の立場が変わる具体的な出来事を、あらかじめ書いておくわけです。

私の場合、書いておくべきだった合図は「お客様の窓口を任されたら」でした。実際にはその合図に気づかないまま窓口に立ち、固定資産の質問で固まりました。メモが1行あれば、打ち合わせの前に事務担当へ確認しておく、くらいの手は打てたはずです。

このメモは、試験勉強の最後の1分でできます。十数年後の冷や汗と比べれば、ずいぶん安い買い物だと思います。

基本情報の計算問題についてよくある質問

計算問題を全部捨てても合格できますか?

計算上は可能です。科目Aの計算問題を全問落としても、知識問題を取り切れば600点には届きます。

ただし科目Bは別です。アルゴリズムの読解を捨てると、科目B側の600点が厳しくなります。捨てていいのは科目Aの計算であって、科目Bのトレースではありません。

文系出身でも計算問題は解けるようになりますか?

出題される計算は、数学的な難易度としては高くありません。必要なのは発想力ではなく、パターンに慣れることです。

進数変換のように手順が決まっているものから始めると、感触がつかみやすいはずです。全分野を相手にせず、2〜3パターンに絞ってください。

会計系の計算は、エンジニアには本当に不要ですか?

担当者として手を動かしている間は、使う場面はほとんどありません。私も何年も使いませんでした。

ただし、リーダーや窓口の立場になった瞬間に必要になります。必要になるタイミングが遅れてやってくるだけで、不要なわけではないという理解が近いはずです。

独学でも計算問題は対策できますか?

対策できます。計算問題は範囲が限られていて、しかも出題のパターンが安定しているためです。

独学で効率を上げるなら、解説の詳しい問題集を1冊決めて、同じ問題を3回解くほうが、新しい問題集を何冊も買うより早く形になります。1回目で解法を確認し、2回目で手順を確かめ、3回目で時間を測る。この3周が終わったパターンは、本番でも落としません。

逆に、いろいろな教材に手を広げると、どのパターンを自分が拾えているのか分からなくなります。捨てる判断をするためにも、拾う範囲は狭く固定するほうが管理しやすいはずです。

電卓が使えないのですが、筆算に慣れる練習は必要ですか?

試験では電卓を使えません(執筆時点。受験要項は必ず公式でご確認ください)。ただし、複雑な筆算を要求される出題はそれほど多くありません。

必要なのは計算力よりも、桁と単位を落とさない注意力です。過去問を解くときに、暗算で飛ばさず途中式を書く癖をつけておくと、本番の取りこぼしが減ります。

計算問題より、アルゴリズムのほうが不安です

そちらが正しい優先順位です。科目Aの計算問題は捨てても挽回できますが、科目Bのアルゴリズムは配点の中心にあるため、捨てると合格が遠のきます。

限られた時間をどちらに使うか迷ったら、科目Bのトレース練習を優先してください。科目Aの計算は、余力が出てから2〜3パターンだけ拾えば足ります。

捨てた分野は、いつ取り戻せばいいですか?

試験直後に取り戻す必要はありません。合格がゴールなら、そのままで構いません。

取り戻すべきタイミングは、後輩がついたとき、お客様の窓口を任されたとき、見積もりに関わり始めたときです。このどれかが起きたら、捨てた分野のメモを見返してください。私はそのメモを作っていなかったので、客先で気づく羽目になりました。

まとめ:捨てるのは戦術、忘れるのが事故

基本情報技術者試験の計算問題について、ここまでの話を整理します。

  • 合格だけを考えるなら、科目Aの計算問題は捨てて構わない
  • ただし科目Bのアルゴリズムは別。ここを捨てると合格自体が遠のく
  • 捨てた計算には2種類ある。現場が勝手に教え直してくれるものと、誰も教えてくれないもの
  • 進数変換や帯域計算は前者。減価償却や固定資産といった会計系は後者
  • 会計系は担当者のうちは一度も使わないが、立場が上がった日に前触れなく降ってくる
  • 私はそれで客先で固まり、自分ではなく会社の評価を下げた
  • 取り戻す方法は勉強だけではない。答えられる人を含めた体制に組み替えるのも正解のひとつ

計算問題を捨てるのは、限られた時間を配分するための戦術です。そこは何も悪くありません。

事故になるのは、捨てたことを忘れたときです。試験が終わったら、飛ばした分野を1行でいいので書き残しておいてください。その1行があるだけで、10年後に客先で黙り込む確率は下がります。

当時の自分に一言だけ伝えられるなら、「会計を勉強しろ」とは言いません。「分からない分野があることを、自分で把握しておけ」と言います。

把握さえしていれば、打ち合わせの前に事務担当へ一本連絡を入れておく、という手が打てました。その一手間があるかないかで、「あなたの会社は技術だけですもんね」という一言をもらうかどうかが決まっていたはずです。

技術者にとって、知らないこと自体は恥ではありません。知らないことを知らないまま、お客様の前に立ってしまうのが事故です。

私のメモは、十数年前の打ち合わせの記憶そのものです。できれば、もっと安上がりな方法で残してください。

  • この記事を書いた人

やめとけ主任

インフラエンジニア一筋30年。ネットワーク・セキュリティの高度専門資格や国際監査資格を保持する、叩き上げの技術屋です。 50代で「ITはやめとけ」という閉塞感を打破すべく、PMPを取得。一度は不合格という挫折を味わうも、その失敗から「現場で本当に使える合格戦略」を確立しました。 本ブログでは、30年の知見とPMP攻略法、そして「資格を武器にしたキャリア再構築術」を、自身の転職・失敗経験を交えてリアルに発信します。

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